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手や指には、骨・筋肉・腱・神経・血管などがあります。これらが狭い範囲にあるため、手術に際して他の部位よりはるかに細かい操作が必要とされます。
例えば、指の骨折の場合は、少し曲がってつくだけでも変形が分かったり、指の曲がりが悪くなったりします。また、腱の切断では、腱が癒合するときまわりの組織に癒着しやすいため、細心の注意をはらって縫合する必要があります。癒着がおこれば指は動かなくなるからです。
血管は直径が1mm程度と細いため、血管の吻合手術では、手術用顕微鏡を使い、10~20倍に拡大して血管吻合を行います。道具も専用の小さいものを使い、縫合糸はナイロン製の径17ミクロン程の極細いものです。手の手術では、特殊な手技、道具が必要であることが分かると思います。手の外傷や疾患の治療は、このような医療技術をもった医師がいて、手術用顕微鏡などの特殊な機械を備えた病院で行うほうが良いと言えます。
手の外傷がひどいと、指が変形したり、動かなくなったりすることがあり、そのため職業を変えなくてはならないこともあります。
最近工場の機械が発達し便利になりましたが、不注意で手に外傷を受けるとひどく損傷されるようになりました。鋸だけ用いていた時代では、事故を起こしても、皮膚の切り傷だけですんでいましたが、電動鋸を使うようになって、指を切断するような大きな外傷を受けるようになりました。
大きな外傷を受けても、障害をなるべく少なくなるように手の外科の専門医がいる病院で治療するのがよいでしょう。
「手外科」で主に扱う疾患
骨折・脱臼・靱帯損傷 |
1.末節骨・中節骨・基節骨骨折 2.中手骨骨折(Bennett脱臼骨折・尺側列CM関節内骨折を含む) 3.PIP・MP関節脱臼及び靱帯損傷 4.舟状骨骨折 5.橈骨遠位端骨折 6.橈・尺骨骨幹部骨折 7.肘関節内の骨折・脱臼・靱帯損傷 橈骨頭・頚部骨折 |
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腱損傷 | 屈筋腱・伸筋腱損傷 |
絞扼性神経障害 | 手根管症候群・肘部管症候群 |
先天異常 | 合短指症・多指症 |
関節変性疾患 | 母指CM関節症 |
炎症性疾患 |
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手の腫瘍 | |
拘縮 | 皮膚性・筋性・腱性・関節性拘縮 Dupuytoren拘縮 |
手関節疾患 | Kienbock病・遠位橈尺関節障害・TFCC損傷・尺骨突き上げ症候群 |
内視鏡 | |
マイクロサージャリー | 切断肢指再接着・血管吻合・神経縫合 遊離組織移植(皮弁・複合組織) |
切断指・肢再接着手術について
はじめに
昭和51年11月九州で初めて当院で切断された指の再接着手術が行われました。
それ以来今日まで一貫して当院でこの手術を行っています。最近は工場の機械の安全性が高まったせいか以前ほど症例は多くありませんが、それでも年間30~40例の手術が行われています。
一旦切断された指や手・足は、骨や皮膚をつないだだけでは生き残ることはなく壊死してしまいます。血液の循環が再建できてはじめて指がつながるわけです。動脈と静脈が吻合されて血液の循環が保たれれば、一旦切断された指や手も元のとおりにつながることになります。
手・足の血管は太いので血管吻合がやりやすいのですが、指の血管は直径1mm以下ですので、手術用の顕微鏡を用いて細かい糸とそれを扱う道具を用いて血管吻合を行います。小さい血管を吻合するのが難しいので、この手術がどこの病院でもできる手術というわけにはいかないのです。
どのような切断指が手術できるのでしょう。
一番よいのは刃物で鋭利に切断されたものです。こういうものは滅多にありませんが、つながったら元のようになります。 次によいのは傷口は少しギザギザになっていたりしますが、電気ノコギリなどの機械で切断されたものです。よくないのは機械にはさまれてペチャンコになったもの、ミンチ状になったものなどです。たまに指輪が何かに引っかかって指の皮膚がはがれるように切断されることがあります。このようなものは手術ができないか、手術しても成功率が低くなります。鋭利に切断されたものは80%以上の確率でつながるといえるでしょう。
年齢的なことも問題になります。70歳以上の人でも手術が可能ですが、血管の状態の個人差が大きいのではっきり何歳までと線を引くことはできません。動脈硬化症、糖尿病など血管に病変がある人や、喫煙者は成功率が悪くなります。 70歳以上でもこういう病気がなく、喫煙歴のない人は血管が若く吻合しやすいので成功率が高くなります。血管を若く保つには、糖尿病、高血圧などに注意し、喫煙はやめることです。
切断された指はどうしたらいいのでしょう。
切断された指や手は、常温でそのままにしておくと6時間程で組織の変化が進み、手術ができなくなります。
もし遠くまで搬送する必要がある場合は冷やしておく必要がありますが、福岡市内や周辺部であれば1時間程しかかかりませんので冷やす必要もないでしょう。汚れている場合は、水道水などで洗った後、ひからびてしまわないよう、少し湿らせたガーゼに包んで指を持ってきてください。自信がない場合は、最寄りの整形外科や外科の医院へ切断された指を持ってなるべく早く行って下さい。うまく処置して当院へ搬送していただけると思います。
最後に
一般の人にはあまり多くない外傷ですが、切断された指・手は状態さえよければ生着しますので、是非一般的医学知識として頭の片隅において下さい。まわりの人にも教えてあげてください。